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イ ベ ン ト の ご 報 告

◆さまざまなものを超えて「九条」という一点で集う◆



「平和と正義が出会う時:大人のグローバル社会はいずこに」
第10回集会  講師:浜 矩子 さん 
2012年10月13日実施 <報告>

           講演する浜さん  

 2012年10月13日(土曜日)、第10回集会を開催しました。
経済の不安が広がる「グローバル社会」の今。は
たして社会に平和や正義は存在するのでしょうか。
浜矩子さんのお話は、何を見つめ、考え、行動すればよいかのヒントがつまっていました。以下に要旨を載せます。

 

 
会場の様子です

 


浜矩子さんを紹介する
主催者:林弘子さん

 

 
会場からの質問も出ました

 


受付の様子です
書籍販売も行いました

 グローバル社会の今こそ、平和憲法を守ることは重要です。
 旧約聖書には、神の国を「慈しみと真はめぐり合い、正義と平和が抱き合う」とかいてありますが、グローバル時代の人間界では、「慈しみと真はすれ違い、正義と平和はいがみあう」。自分の信念が強い程、他人の信念を慈しむことは難しく、対立・衝突・戦争が生じます。中東の状況、日本の中国・韓国との領土問題も、しかり。
 問題の解決に、愚者の回答と賢者の回答があります。愚者の回答とは「引きこもり」。交わりなき所には排除も衝突もありません。安直ですが、悲しく愚かな回答です。他方、賢者の回答は、「支え合い」。相まみえ、恩恵を施す中で、正義と正義を和解させる力が出てきます。
 経済について、「マーケットは弱肉強食の世界」、「他を打ち負かして残った唯一の正義がグローバルスタンダード」などというのは誤解です。元々、市場は、各々が得意な物を持ち寄って、ない物を受け取る場。イチバからシジョウに変わり、互いに補いあう機能が忘れ去られています。
 グローバル経済は、グローバルジャングルとも言われ、サバイバルのための激しい競争に目が奪われがちですが、ジャングルは、大いなる競争・淘汰の場であると同時に、大いなる共生の場でもあります。色々な生物が生態系を共に生き、役割の中で支えあう共生の力学が働いています。ライオンが王者として君臨するにせよ、より弱い動物・草木・バクテリア…という生態系あってこそ。グローバル経済は、共生と淘汰の二面性を持つ、正にジャングル。強者の正義だけでは荒涼な砂漠になってしまいます。共生が主流を占める豊かな世界に持っていかなくてはなりません。
 グローバルジャングルはまた、ITの恩恵もあり、従来、出会わなかった人々が、国境を超え、幅広く多角的に出会う場です。ヒト、モノ、カネは国境を越えて都合のいい所に飛んでいきますが、国は国境を越えられません。ここにきて、国民国家の存在と実態との間の矛盾から、国民国家レベルの政策が窮地に追い込まれています。例えば、お金が国境を越えて暴走したリーマンショック、金融恐慌。国が国民を守ろうと財政を使い、財政破綻に追い込まれることになります。ギリシャやスペインだけでなく、日本も同じ状況です。ただ、日本国家の財政破綻が顕在化しないのは、国債が日本人に保有されているため。今が手放すタイミング!
 金融政策も、危機にさらされています。ユーロ圏では、ECB欧州中央銀行が、破綻寸前国家の国債の買取りを宣言しましたが、最も性質の悪い不良債権を、手元にため込んで、通貨価値の番人たる役割を果たせるのか?「ECBのECB化」つまり「欧州中央銀行がヨーロピアン・セントラル・バンクではなくカタストロフィ(大破綻)・バンク化」が恐い。
 ここで、警戒すべきは、窮地に追い込まれた国民国家、政策責任者が駆られる誘惑、「ひきこもり」、さらに「籠城前に十分な領土、市場・生産資源を」という悪魔の囁きです。1930年代は、こうしてブロック経済体制が敷かれ、経済ブロックの衝突が平和を壊しました。イギリスが植民地ポンドブロックで先鞭をつけ、次いでフランスの金(金本位制国)ブロック、ナチスブロックに、アジアでは帝国日本がつっぱしり…。同様の恐れを、直視すべきところまで来ています。
 例えばTPP(環太平洋戦略的経済協定)。目下「例外なき貿易自由化の受け入れの可否」が論じられていますが大間違いです。その実態は、自由化の対極、不自由化。特定地域を囲い込んで排他的に守るもので、「自由貿易協定」とは羊頭狗肉、「地域限定排他貿易機構」と言い変えたい。これが蔓延すれば、通商の世界は淘汰と分捕り合戦になります。こうした事態を防ぐため、第二次世界大戦後に作られたのがWTO世界貿易機関。その理念は、自由・無差別・互恵。全方位的に恩恵を施し合おうというものですが、TPPは全く逆。何としても阻まなければいけません。そのためには、成熟度の高い「大人」のグローバル社会である必要があります。
 合言葉は2つ。「シェアからシェアへ」と「多様性と包摂性(包容力)」。「シェア」には、2つの正反対の意味があります。市場占有率などにいう「奪い合い」のシェアから、「分かち合い」のシェアへ。「多様性と包摂性」は、前者を横軸、後者を縦軸の座標にした平面のイメージを持ってください。縦軸は、上は包容力が、下は排他性が高まる。横軸は、右は多様性、左は均一性を示します。理想郷は右上にあります。左上は、包摂性・均一度が高い。従前の日本社会です。年功序列・護送船団。落ちこぼれないが、違うことをすると排除される。右下は、多様性は豊かだが包摂性は低く、排除の論理が働きやすい。ユーロ危機を巡り、多様性がぶつかりあう今のヨーロッパです。左下は最悪。排除の論理で多様性もない。さしずめハシズム帝国、大阪市です。
 理想郷へ向かうには、「僕富論から君富論へ」の変換が必要です。あなたの富が減らないように私も配慮しよう。僕富論が、国産品愛用運動;バイジャパニーズなら、君富論は、「トヨタ社員は日産車を買う。日産社員はトヨタ車で出勤!?」
 まさか、との冷たい視線には、反論を2点あげます。まずは、物は言いようで、要は「情けは人のためならず」ということ。他人のグラスが空の時、人に注ぐと確実に見返りがくる。盛り上がるし皆ビールが飲める。
 反論その2は、歴史の教訓で、「まさかは必ず起こる」ということ。最悪のまさかは、ヒットラーによる恐怖政治ですが、輝かしいまさかはベルリンの壁崩壊などです。
 そいうわけで、私は皆さんと一つ契約を結びたい。君富論の普及に全身全霊を傾けてほしい。正義と平和が出会う世界になるか否かは、皆さんの契約履行状況にかかっているのです。

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